「朝食を座敷に運んで、ゆったりと
変貌した庭に見入りつつ頂きました。」
先日、そのようなお言葉を頂けるお手入れに携わらせていただきました。
そのお庭は60年前に作られたお庭で、今回ご依頼いただいたお客様の義父にあたる方のお庭だったそうです。
永く大切にされてきたお庭は美しく、秋も深まった今ならではの紅葉の朱色が青空に映える姿が印象的でした。


ただ、そのように大切にしていても、年月を重ねることで見たい景色が隠れてしまったり、実生の植物までをも大切に育てていたため、当初のお庭の景色とは違う景色になっている部分がありました。
行ったことは60年前の風景に戻していくという作業。
今回は私たち季節の詩だけでなく、お客様のことを、お庭のことを大事にしたいと集まった8名の方々と一緒に作業いたしました。

大きくなり過ぎた低木や実生の木を切り、そこに隠れている景色を際立たせていきます。
代表の石坂が、一つ手を入れるたびにお客様に確認し、お話しながら進めていきました。
この木を切ることで生まれる風景がどんなものか、
この植物、景色はお義父様は愛されていたか、
一つ一つ、丁寧に、作業に意味を持たせて伝えていく。



そうやって会話を重ねていくうちに、はじめは縁側から作業風景を眺めていたお客様が作業着をまとい、一緒にお庭でお手入れをしてくださいました。


そして、一人一人が同じ気持ちで、同じ空間で、同じ作業をする。
石坂は常々私たちに、どこまで気を配れるかで庭の景色が変わるということを伝えてくれますが、今がまさにそういうことじゃないかと感じられました。
たった2時間でも、初めて剪定ハサミを持った方々でも、「気を配ること」ができる人が10人いれば細部まで気の入った空間になります。


作業後、庭の灯籠にろうそくを入れ、縁側から眺めさせていただきました。




娯楽も少なく、電気も今ほど発達していない時代、このような景色を眺めて一日の終わりを過ごしていたのでしょうか。
本物の火だからこそ感じられる、ろうそくの灯りの揺らぎが心地よく、、
今日という日に出会えて良かったなあと、心から思える贅沢な時間を味わうことができました。
今回のお手入れでは、庭を綺麗にしに行ったというよりも、お客様の過去を整理し未来を繋ぎに行ったのではないかと思います。
一つ切るごとにお客様の背負ってきたものが軽くなり、
お客様の想いが少しずつお庭に反映されていくような、なんとも不思議な時間でした。
大切なものをすべて持ち続けることだけが大切にするということではないのだと思います。
昔を大切にし続けるために、今大切にしたいカタチにしていくこと。
そして、大切にしたいという想いは技術を凌駕するということ。
そういうお庭のお手入れを、この庭と作業してくださった方々を通して、改めて学んだような気がします。
冒頭の言葉をいただけるようなお手入れを、これからも日々行っていきたいと思います。
(Before)

(After)


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